省エネ住宅のすばらしさを「見える化」する重要性
日本が2050年にカーボンニュートラル(脱炭素)を実現するため、住宅業界では今後、断熱化における省エネ性能を高めた住宅の供給に力を入れる必要があります。
とは言っても、お客様にその魅力を伝え十分に理解してもらえるのか、そして何より本当に契約につなげられるのか、不安を感じているハウスビルダー様も多いと思われます。
確かに、省エネ住宅(省エネ住宅とは、断熱・気密・防湿・設備仕様がある一定の条件をクリアーした住宅を指すと弊社は定義しています)を供給することにより、設計や施工などの技術的な難しさに加え、コストアップにより競争力が低下する可能性があります。
そこで、省エネ住宅は建てた後にメリットが出る住宅であるということ、ランニングコストや生活スタイルをメリットとしてお客様にきちんと説明する事が重要となってきます。
そこで、今回はどのような手法によってそのメリットを伝えていくべきかについて考えていきます。
省エネ住宅のメリットとは
まずは、省エネ住宅のメリットについて、ビルダー様側とお客様側に分けて考えていきます。
– ビルダー様側のメリット
・削減可能性のある光熱費といった項目を建築費へ加算し、提案できる(請負単価の向上)
・技術力の向上により紹介客を増やす事ができる(他社との差別化)
・環境問題へ対応している「社会貢献」の一部ともなり、会社のブランディングの一部にもなる
– お客様側のメリット
・温度差のない温熱環境
・結露しづらい環境
・外部の音が入りづらい環境ランディングの一部にもなる
・ランニングコストの軽減
上記の内容から、省エネ住宅はお客様にも、ビルダー様にも、WIN-WINの関係となっています。
ビルダー様が積極的に省エネ住宅へ取り組んでいくことのメリットが分かるのではないでしょうか。
明確な基準と根拠を示すことが大切
前述したメリットをより明確に説明するためには、性能を見える化し、基準とエビデンス(根拠)を示しながら省エネ住宅の良さを説明することが非常に大切になります。
では、それはどのような手法があるのでしょうか。
例えば、「HEAT20」という断熱化における省エネ性能のグレードを活用する手法があります。
これは、学識経験者らが2020年2月に立ち上げた一般社団法人「20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会」によるものです。「UA値(外皮平均熱貫流率)」に基づき、下のグレードからG1、G2、G3と表示。
G1は、居室連続暖房による最低室温を「おおむね10℃に保つこと」としています。これは非暖房室の表面結露の防止を主目的にしているとのことです。
G2は1・2地域を除けば「おおむね13℃」、G3は「おおむね15℃以上を確保すること」としています。これらは室内の温度むらを小さくし、住まい手の暮らしやすさの向上や温度ストレスを考え設定したものといいます。
「平成28年省エネ基準における間歇暖房時の暖房負荷に対する全館連続暖房(24時間全館空調)とした時の暖房負荷削減率」についても明示しています。1・2地域で居室連続暖房を行うケースでは、G1が約20%削減、G2が約35%削減、G3が約55%削減などです。
全館連続暖房は確実に室温を維持できる一方、高価で計画性も必要。上記はその導入の判断をする指標となり、削減量を示すことでイニシャルコストと長期的なランニングコストの関係性を示すことができ、導入を推奨する根拠になります。
なお、ハウスメーカーなどが普及を進めている「ZEH」(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の断熱性能は、G1の少し下のレベルとなります。ですので、G2レベルの住宅を供給するハウスビルダー様なら、断熱性能の高さをお客様に訴求しやすくなります。
より重要度を増す設計・提案ノウハウの工夫
「当社はハウスメーカーより断熱性の高い住宅を供給しています」とお客様にアピールするのに比べて、「HEAT20」の基準に則れば断熱化における省エネ性能を「見える化」でき、より納得感のある提案になるでしょう。
このほか、24時間全館空調を導入した省エネ住宅が住まい手の健康の維持向上に貢献するという学識経験者による報告も近年増えています(ハウジング・トリビューン2021年20号「特集:暖かな住まいと健康」など)。
「室温が一定になり体がいい感じに緩んでいるのを感じます」などといった、住まい手の生の声も紹介されています(新建ハウジング『だん』2021年11号の特集「住んでみて気づいた 高断熱住宅の隠れたメリット」より)。
住宅の断熱性能を高めることで実現できる上記のような第三者による研究成果を学び、既に省エネ住宅に住んでいる消費者の声をお客様に紹介していくことも、ハウスビルダー様が積極的に取り組むべきことであり、他社との差別化に役立つことであると考えられます。
とは言っても省エネ住宅をお客様に建築・購入していただくことは、イニシャルコストの兼ね合い、建物の間取りなどから難しいケースがあります。24時間全館空調を設置する場合はなおさらです。
そこでより重要になるのが設計・提案のノウハウによる工夫です。
例えば、イニシャルコストがネックになる場合は、建物の規模を小さくする提案も有効かもしれません。近年は世帯人数が減っていますから、不要なスペースを減らし、その分を断熱性能の向上のための費用に充てるわけです。
また、省エネ住宅のイニシャルコストはそうではない住宅に比べ高くなりますが、長期的な空調のランニングコストは安くなります。前者のイニシャル+ランニングコストが後者のそれを下回る可能性があるわけで、そうしたトータルコストの「見える化」もより積極的に行うことが求められそうです。
最適な省エネをシミュレーションできる『e-cocochi(イーココチ)』
ところで、野原住環境(株)では省エネ仕様設計サービス『e-cocochi(イーココチ)』を提供しています。
建築場所や日時を入力することで、間取り図で室温変化や光熱費のシミュレーション、「室内温度が15℃以下になる日数」などを提示し、建物の性能を「見える化」することができます。
ハウスビルダー様が目指す省エネレベルに合わせて、性能・コスト・施工性などの観点から最適な省エネ建材、機器を選定し、組み合わせてご提案することができます。
ぜひお問い合わせ頂けますようお願いいたします。